先日、デジタル化・AI導入補助金に新しくできる「スマートレジ類型」「POSレジ類型」の速報を書きました。改修費が対象になること、中堅企業が入ること、書類が省力化補助金やものづくり補助金の型に近いこと。その3つを中心にした記事です。
書いたあとで、事務局の資料をもう一度頭から読み直しました。そして、制度の中身よりも先に、多くの方がつまずくのはここだろうと思った点があります。「結局、自分は申請できるのか」「いつ、何をすればいいのか」です。
「先に買って後から申請できる」と聞くと、今年すでにインボイス枠でレジを入れた方も、改修費を後から足せるように思えます。ところが資料を読むと、そういう仕組みではありませんでした。むしろ、今年レジで申請した方ほど対象外になりやすい作りとなっています。
この記事では、申請できる人とできない人、時期、これから申請する場合の流れを、図を使って順番に整理します。内容は2026年10月29日に事務局が公開した案内資料に基づきます。資料自身に「変更となる可能性」があると書かれていて、公募要領はまだ出ていません。その前提で読んでください。

1. まず押さえておきたい前提:いつもの補助金とは順番が逆です
普段のデジタル化・AI導入補助金は、申請して交付決定を受けてから、契約・導入・支払いをします。交付決定の前に買ったものは対象外です。
今回の2類型は「事前着手制度」で、順番が逆です。2026年9月15日以降に契約・発注したものを導入・改修し、代金を払い終えてから、「交付申請兼実績報告」を1回だけ出します。申請も、IT導入支援事業者と一緒に入力する形ではありません。申請者が自分で入力します。
ここでいう「後から申請」は、導入・改修と支払いを済ませた後に申請するという意味です。今年度、インボイス枠などでレジの交付申請をした方が、改修費だけを追加で申請できる仕組みではありません。
そして、もう一つ気になる一文があります。中小企業庁のチラシには、こう書かれています。
申請要件を満たしている限り、交付対象となりますが、改修費や役務費については、複数見積等が必要となる場合がありますので、ご注意ください。
(中小企業庁 案内チラシ Ver1.0、2026年9月15日)
この「交付対象」が、「申請できる」という意味なのか、「交付される」という意味なのかは、まだはっきりしません。通常枠やインボイス枠は申請を審査して採否を決める補助金で、通常枠の採択率は半分を切ることもあります。もし後者の意味なら、他社と点数で競わず、要件を満たした申請者全員に交付される可能性もゼロではありません。
ただし、事務局の案内資料(2026年10月29日)には「補助金の交付を保証するものではありません。公募要領に定める各種申請要件等を満たさない場合は補助金交付の対象外となります」とも書かれています。先に払う制度なので、要件や書類で外れれば、代金はそのまま自己負担です。審査の方法や、予算の上限に達した場合の扱いも、まだ書かれていません。
どちらの意味だとしても、まず確かめるべきは「自分が要件を満たしているか」と「書類が揃っているか」の2つです。この記事の判定チャートと申請の流れは、その2つを確かめるためのものです。申請できるかどうかは、買う前に確かめておいてください。
2. あなたは申請できる? 4つの質問で判定
資料の申請要件を、順番に答えていけば分かる形に並べ直しました。
・飲食料品を扱う小売業者 ・従業員2,000人以下
・直近の自己資本比率40%未満 ・みなし大企業でない
(中堅企業もQ2〜Q4に当てはまらないことが必要)
| スマートレジ類型 | POSレジ類型 | |
|---|---|---|
| スマートレジで申請した | × | × |
| スマートレジ以外のPOSレジで申請した | ○ | × |
| レジでは申請していない | ○ | ○ |
いちばん引っかかりやすいのはQ4だと思います。要件の書き方は「デジタル化・AI導入補助金2026において、『スマートレジ』(POSレジ類型では『スマートレジ』又は『POSレジ』)に該当するITツールの導入に係る交付申請を行っていないこと」です。
ポイントは3つあります。
- 見られるのは「交付申請をしたかどうか」です。採択された方も、交付決定が出た方も、審査中の方も含まれます。外れるのは不採択だった方だけです
- 枠は問いません。通常枠でもインボイス枠でも同じです
- 対象は「2026」での申請です。2025年以前のIT導入補助金でレジを入れた方は、この要件では除外されていません
つまり、今年インボイス枠でPOSレジを入れた方は、そのPOSを税率1%に対応させる改修をしても、POSレジ類型は使えません。正直なところ、ここは私も読んでいて「そうなるのか」と思いました。去年までに入れたレジを直す方は使えて、今年入れたレジを直す方は使えない。資料を読む限り、そういう線引きです。
3. ケース別:申請できる?できない?
よくありそうな状況を並べると、こうなります。
| やりたいこと・状況 | 判定 | ポイント |
|---|---|---|
| 従来型のレジを、タブレットのスマートレジに替えたい | ○ | スマートレジ類型 |
| 使っているPOSレジを、税率1%に対応させる改修をしたい | ○ | POSレジ類型(改修) |
| POSと連携している受発注・請求書管理システムも直したい | ○ | レジに付随する(連携している)ことをシステム連携図で示す |
| 手持ちのタブレットに、ソフトとレジ付属品だけ入れたい | ○ | 付属品の登録・申請方法は後日案内 |
| 多店舗のスーパー(中堅企業)でPOSを改修したい | △ | 条件を満たせばPOSレジ類型の改修費のみ(1/3・上限2,500万円) |
| 今年インボイス枠でスマートレジを入れた。改修費も申請したい | × | どちらの類型にも申請できない |
| 今年インボイス枠で従来型POSを入れた。そのPOSを改修したい | × | POSレジ類型には申請できない |
| 9月14日以前に契約した | × | 対象は9月15日以降の契約・発注 |
| 代金を現金や分割払いで払った | × | 銀行振込かカード一括払いのみ |
| ハードウェアだけ買いたい | × | ソフトウェア等とあわせて申請が必要 |
| 税率と関係のない機能追加の改修 | × | 改修は消費税率の変更対応に限る |
※○でも交付を保証するものではありません。事務局案内資料(2026年10月29日)にもとづく。
どちらの類型を使うかは、ざっくり言うと次の分け方です。
| やりたいこと | 使う類型 |
|---|---|
| 従来型のレジから、タブレットやスマホで動くスマートレジに替える | スマートレジ類型 |
| スマートレジ以外のPOSレジを入れる、または今のPOSレジを改修する | POSレジ類型 |
| レジと連携している受発注・請求書管理システムを改修する | 連携しているレジの類型で(連携をシステム連携図で示す) |
スマートレジ類型は「導入」の類型で、スマートレジ自体の改修は書かれていません。POSレジ類型は「導入若しくは改修」と書かれていて、改修だけの申請も入っています。中堅企業が使えるのはPOSレジ類型の改修費だけです。
補助上限は、中小企業・小規模事業者の場合、1機能で50万円、2機能以上で350万円です。改修の場合は、直すシステムの種類で機能を数えます。たとえばPOSレジと受発注システムを両方直せば2機能になり、上限が350万円まで上がります。
4. いつ何が起きるか
日付を並べると、もう始まっている制度だということが分かります。
対象期間は9月15日から始まっています。すでに9月15日以降に契約したレジや改修は、要件を満たせば対象になりえます。逆に、9月14日以前の契約は対象外です。
気をつけたいのは終わりのほうです。申請は「導入・改修が終わり、支払いも終わってから」なので、受付が締まる3月頃までに、全部払い終えていなければなりません。改修は思ったより時間がかかります。税率変更は4月1日なので、ぎりぎりに動くと改修も申請も間に合わない、ということが起こりえます。
なお、事務局は10月29日に「ITツール登録の最終締切は12月9日」と案内しています。ただしスマートレジやPOSレジ類型の対象ツールは、締切後も登録できるとされています。レジのメーカーやベンダーの方は、ここを読み違えないでください。
5. これから申請する場合の流れ
これから動く方は、この4段階で進みます。
- 上の判定で、申請できるか・どちらの類型かを確認
- GビズIDプライムを取得(支援事業者の招待は不要)
- 改修するなら、改修前の書類を確保:利用開始時の契約書・申込書・請求書、改修前の機能説明資料
- レジの導入:IT導入支援事業者から、登録済み(予定)のITツールで見積
- 改修:改修事業者から内訳つきの見積。「改修費用一式」は不可
- 改修の見積が1社あたり税抜50万円以上なら相見積。取れない・最安値以外を選ぶなら理由を整理
- ハードウェアは納品日も9月15日以降。設置して、補助金で導入したと分かるラベルを貼る
- 請求書は契約より後、支払日以前の日付
- 支払いは銀行振込かクレジットカード一括のみ(現金・分割は不可)
- 申請マイページを開設し、申請者が自分で交付申請兼実績報告を入力・提出
- 支援事業者・改修事業者には書類集めで協力してもらう
- その後、審査・補助金交付。効果報告もある(詳細は公募要領待ち)
いくつか補足します。
改修前の書類は、改修の前に確保してください。 改修の申請には「改修以前から利用していることが分かる書類」と「改修前の機能説明資料」が必要です。何年も前に入れたPOSだと、導入時の契約書や申込書がすぐに出てこないことがあります。改修が終わってから探すと、システムの画面も資料も新しいものに置き換わっていて、困ることになります。
見積は内訳が命です。 「改修費用一式」の見積は認められません。改修の見積が1社あたり税抜50万円以上なら、同じ条件で相見積を取るのが原則です。最安値以外の会社を選ぶ場合や、相見積を取れない事情がある場合は、事務局指定様式の「選定理由書」で理由を書きます。相見積を取らなかった場合でも、選定理由書は必要です。
レジ本体は、登録されたITツールである必要があります。 導入するレジのソフトやハードは、申請の時点で事務局にITツール登録されていなければなりません。契約の前に、ベンダーに「スマートレジ類型(またはPOSレジ類型)の対象として登録されるか」を確認しておくと安心です。
支払い方法で落ちないように。 現金払いは、窓口やATMからの振込であっても認められません。クレジットカードは一括払いのみで、法人なら法人名義、個人事業主なら本人名義のカードです。
申請するのはあなた自身です。 申請マイページの入力は申請者が行います。IT導入支援事業者や改修事業者は、書類を揃える面で協力する立場です。
6. まだ分からないこと
資料を読み込んでも、書かれていないことがあります。推測で埋めずに、分からないまま並べておきます。
- 今年度のレジの交付申請を、交付決定後に辞退したり取り下げたりした場合の扱い
- 「POSレジに該当するITツール」の範囲。POSレジ類型の対象を示す区分は10月29日にできたばかりで、それ以前の申請がどう判定されるかは書かれていません
- スマートレジ類型で、受発注・請求書管理システムの改修だけを申請できるか
- 9月15日以降にすでに契約していて、相見積を取っていなかった場合の扱い
- 中堅企業の申請方法(「異なる」とだけ書かれています)
- 申請受付と対象期間の正確な終了日
公募要領が出たら、この部分は改めて書き直します。
7. まとめ
- 先に契約・導入・支払いを済ませ、2027年1月中旬〜3月頃に申請者が自分で申請する
- チラシには「申請要件を満たしている限り、交付対象」とある。意味は未確定で、要件を満たした全員に交付される可能性もゼロではない、という段階。交付は保証されず、要件や書類で外れれば自己負担
- 申請できるのは中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)。中堅企業は条件つきでPOSレジ類型の改修費のみ
- 今年度(2026)にレジで交付申請した方は、採択済みでも対象外になりやすい。2025年以前にレジを入れた方は、この要件では除外されていない
- 申請は1事業者1回だけ。2つの類型をまたぐこともできない
- 対象は2026年9月15日以降の契約・発注。支払いは銀行振込かカード一括のみ
- 改修するなら、改修前の書類の確保と内訳つきの見積・相見積を先に
制度の全体像や、書類が省力化補助金・ものづくり補助金の型に近いという話は、速報の記事に書いています。

「自分は使えるのか」が分からないまま年明けを迎えると、受付が始まってから慌てることになります。まずは判定チャートで、自分がどこに当てはまるかを確かめてみてください。
当社もIT導入支援事業者として、レジや受発注まわりの導入相談を受けています。自社の状況だとどうなるか分からない、という方はお問い合わせください。
出典・参照資料(一次情報)
本記事の制度内容は、以下の公表資料の記載にもとづきます(最終確認日:2026年10月29日)。制度は変更される可能性があります。申請にあたっては必ず公募要領・交付規程をご確認ください。
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「【デジタル化・AI導入補助金2026】消費税率の引下げ及び将来の消費税率変更に向けた対応の支援に係る「スマートレジ類型」及び「POSレジ類型」の新設について」(2026年10月29日)https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_announce_smartregi_posregi.pdf
- 同事務局「ITツール登録要領」(2026年10月29日改訂。「スマートレジ」「POSレジ類型の補助対象となるITツール」の定義)https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_touroku_it_tool.pdf
- 同事務局お知らせ「ITツール登録の最終締め切り日について」(2026年10月29日)https://it-shien.smrj.go.jp/news/40312
- 中小企業庁 案内チラシ「変化の時代に対応できるスマートレジの導入を支援します」(Ver1.0、2026年9月15日)https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/support/hojyokin/digital_ai_shohizei.pdf
- 内閣官房「飲食料品に係る消費税率の引下げ」(大綱:令和8年9月15日閣議決定/法律案:令和8年10月9日閣議決定・第222回国会提出)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/index.html
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)「3-1 補助事業の流れ」https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf









