2026年9月、デジタル化・AI導入補助金において、新たに「事前着手制度」が設けられることが発表されました。
これまでデジタル化・AI導入補助金では、原則として交付決定を受ける前にITツールの契約・導入等を行うことはできませんでした。
しかし今回設けられた事前着手制度では、一定の条件を満たすスマートレジの導入やPOSレジ等の改修について、2026年9月15日以降に先行して導入・改修を行い、その後に補助金を申請することが可能となります。
「補助金を利用したいけれど、交付決定を待っているとレジの入れ替えが間に合わない」
「税率変更に対応できるレジへ早めに切り替えておきたい」
このような事業者にとって、今回の事前着手制度は注目しておきたい制度です。
本記事では、デジタル化・AI導入補助金の「事前着手制度」について、対象となる取り組みや補助内容、通常の申請との違い、利用する際の注意点などを分かりやすく解説します。
デジタル化・AI導入補助金の「事前着手制度」とは?
事前着手制度とは、補助金の申請・交付決定を待たずに、対象となるスマートレジの導入やPOSレジ等の改修を先に行い、その後に補助金を申請できる特例的な制度です。
これまでのデジタル化・AI導入補助金では、原則として交付決定を受けた後にITツールの契約・発注・導入を行う必要があり、交付決定前に契約や導入を行った場合は補助対象外となる可能性がありました。
一方、今回の事前着手制度では、一定の条件を満たすスマートレジの導入やPOSレジ等の改修について、2026年9月15日以降であれば、補助金の申請受付や交付決定を待たずに先行して進めることができます。
その後、所定の期間内に補助金の申請を行い、審査を経て交付決定を受けるという点が、通常の申請との大きな違いです。

今回の制度は、2027年4月から消費税率の引下げを行う方針が示されたことを受け、新しい税率への対応を円滑に進めるために設けられました。
店舗などでは、税率が変更される場合、レジやPOSシステム、受発注システム、請求書管理システムなどについて、設定変更やシステム改修が必要になる可能性があります。
通常の補助金の流れでは、申請から交付決定を経て導入するまでに一定の期間が必要となるため、税率変更への対応を早めに進めたい事業者にとっては、導入時期が課題となる場合があります。
そこで、対象となるスマートレジの導入やPOSレジ等の改修については、2026年9月15日以降に先行して実施し、その後に補助金を申請できる仕組みが設けられました。
「どんなITツールでも先に導入できる」わけではない
ここで注意したいのが、今回の事前着手制度は、デジタル化・AI導入補助金のすべてのITツールを対象としているわけではないという点です。
事前着手制度の対象として示されているのは、新しい税率への対応を目的とした「スマートレジの導入」や「POSレジ等の改修」などです。
通常枠などで申請する業務管理システムや会計ソフト、顧客管理システムなどについて、一律に交付決定前の契約・導入が認められたというわけではありません。
「事前着手制度ができたから、どのITツールでも先に購入してよい」と判断しないよう注意しましょう。
なぜ事前着手制度が設けられた?
今回の制度創設の背景には、2027年4月から消費税率を引き下げる方針が示されたことがあります。
税率変更が行われる場合、小売店や飲食店などでは、商品ごとの税率設定や会計処理などを新しい税率に対応させる必要があります。
特に従来型のレジを使用している事業者の場合、レジそのものの入れ替えが必要になることも考えられます。
また、POSレジを使用している場合でも、税率変更に対応するためのシステム改修が必要になる可能性があります。
こうした対応が2027年4月の制度変更に間に合うよう、通常の「申請→交付決定→導入」という流れだけではなく、先に導入・改修を進められる仕組みとして事前着手制度が設けられています。
事前着手制度では何が補助対象になる?
現時点で公表されている内容では、大きく「スマートレジ類型」と「POSレジ類型」の2つが示されています。
① スマートレジ類型
スマートレジ類型では、従来型のレジからスマートレジへの切り替えなどを支援します。
スマートレジとは、タブレットやスマートフォンなどの汎用端末をレジ端末として利用するモバイルPOSレジなどを指し、売上情報・在庫情報・顧客情報などをクラウド上で一元管理できる仕組みです。
対象経費としては、スマートレジシステムなどのソフトウェアに加えて、導入設定やマニュアル作成、導入研修、保守サポートなどの役務、PC・タブレットなどのハードウェアが想定されています。
単純にレジを新しくするだけでなく、売上情報などをデジタルで管理し、日々の店舗運営を効率化できる点もスマートレジ導入のメリットです。
② POSレジ類型
すでにPOSレジ等を使用している場合には、新しい税率に対応するためのシステム改修などが支援対象となります。
対象として示されている経費には、POSレジのほか、受発注システムや請求書管理システム等の改修費、POSレジシステムの購入費、クラウド利用料などがあります。
また、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポートなどの役務や、レジ購入費などのハードウェアも対象として示されています。
事業者の現在のレジ・システム環境によって、「新しいスマートレジを導入する」のか「現在利用しているPOSレジ等を改修する」のかが変わってくると考えられます。

補助上限額・補助率は?
公表されている概要では、補助上限額は最大350万円、補助率は3/4、小規模事業者については4/5とされています。
ただし、対象となる経費によって補助上限額や補助率などが異なる予定です。
そのため、「購入費用のすべてに一律3/4または4/5の補助率が適用される」という意味ではありません。
具体的な補助額を検討する際には、今後公表される公募要領で、対象経費ごとの補助率・上限額を確認する必要があります。
いつから導入したものが対象になる?
事前着手制度では、2026年9月15日以降に行った対象となるスマートレジの導入やPOSレジ等の改修について、事後に補助金を申請できる仕組みとなっています。
現時点で公表されているスケジュールは、以下のとおりです。
| 事前着手の対象期間 | 2026年9月15日~2027年3月(調整中) |
| 補助金の申請受付期間 | 2027年1月~2027年3月(調整中) |
つまり、申請受付が始まる2027年1月より前であっても、2026年9月15日以降であれば、対象となる導入・改修を先に進められることになります。
ただし、申請受付時期や対象期間については現在調整中とされているため、今後変更される可能性があります。
スマートレジはデジタル化・AI導入補助金で「加点対象」に
スマートレジについては、今回の事前着手制度だけでなく、2026年度のデジタル化・AI導入補助金においても注目されています。
デジタル化・AI導入補助金2026では、インボイス枠(インボイス対応類型)の第3次公募から、対象となる「スマートレジ」を導入する申請について加点措置が実施されています。
つまり、要件を満たすスマートレジを選定することで、補助金の審査上、加点の対象となる場合があります。
ただし、単にタブレット型のPOSレジを導入すれば自動的に加点されるわけではありません。
補助金上の「スマートレジ」として登録されているITツールを選定することなど、所定の要件を満たす必要があります。
特に、POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機などのハードウェアを導入する場合には、対象となるソフトウェアとハードウェアの双方について「スマートレジ」として登録されていることが加点要件となるケースがあります。
補助金の活用を検討する際には、導入予定の製品がスマートレジとして登録されているか、事前に確認しておくことが重要です。
事前着手制度を利用するときの注意点
事前着手制度は、早期にレジの導入・改修を進めたい事業者にとって便利な制度ですが、「先に購入すれば必ず補助金を受け取れる」という制度ではありません。
特に次の点には注意が必要です。
① 事前着手=採択が保証されるわけではない
事前着手制度では、補助金を申請する前に導入・改修を進めることになります。
その後、実際に補助金を申請し、審査を受ける必要があります。
そのため、先にスマートレジを導入したからといって、補助金の交付が確約されるわけではありません。
② 対象となる製品を確認する
レジの導入については、あらかじめ事務局に登録されているスマートレジ・POSレジ等の製品が対象となる予定です。
導入後に「補助対象の製品ではなかった」ということにならないよう、製品の選定には十分注意する必要があります。
③ 契約書や請求書などの書類を保管しておく
事後に補助金を申請する仕組みである以上、いつ、何を、いくらで導入・改修したのかを確認できる資料が重要になります。
具体的な必要書類については今後公表される公募要領を確認する必要がありますが、契約・発注・納品・請求・支払いなどに関する証憑は適切に保管しておくことをおすすめします。
④ 詳細は今後公表される公募要領を確認する
2026年9月時点では、事前着手制度の概要が公表された段階であり、詳細な公募要領は今後事務局ホームページで公表される予定です。
対象となる事業者や経費、申請方法、必要書類などについて追加・変更が行われる可能性があります。
実際に制度を利用する際には、必ず最新の公募要領・事務局の案内を確認しましょう。
事前着手制度の活用を検討した方がよい事業者
今回の制度は、特に次のような事業者にとって活用を検討しやすい制度といえます。
- 現在、従来型のレジを使用している
- スマートレジやモバイルPOSレジへの切り替えを検討している
- 現在使用しているPOSレジ等について、新しい税率への対応が必要になる
- レジだけでなく、売上・在庫・顧客情報などもデジタルで管理したい
- 補助金の申請を待たず、早めに導入・改修を進めたい
特にレジは、店舗の会計業務に欠かせない設備です。
制度変更の直前になって対応しようとすると、製品の導入や設定、従業員への操作説明などに十分な時間を確保できない可能性があります。
事前着手制度を利用するかどうかにかかわらず、現在使用しているレジが今後の制度変更に対応できるのか、早めに確認しておくことが重要です。
まとめ|スマートレジ導入を検討している事業者は早めの情報収集を
デジタル化・AI導入補助金に新たに設けられた「事前着手制度」により、対象となる事業者は、2026年9月15日以降、補助金の申請前であってもスマートレジの導入やPOSレジ等の改修を進められるようになります。
今回のポイントを整理すると、
- 2026年9月15日以降の対象となる導入・改修について事前着手が可能
- スマートレジの導入やPOSレジ等の改修が対象
- 補助上限額は最大350万円
- 補助率は3/4、小規模事業者は4/5(対象経費によって異なる)
- 申請受付は2027年1月~3月を予定
- スマートレジはデジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠で加点対象となる場合もある
といった点が挙げられます。
これまでのデジタル化・AI導入補助金とは導入のタイミングが大きく異なるため、スマートレジやPOSレジの導入・改修を検討している事業者は、制度内容を早めに確認しておきましょう。
一方で、現時点では公募要領がまだ公表されておらず、申請方法や必要書類など、今後明らかになる内容もあります。
株式会社ai-soumuでは、デジタル化・AI導入補助金をはじめとした補助金活用について、事業者様の状況に合わせたサポートを行っています。
「自社が事前着手制度の対象になるのか知りたい」
「導入予定のスマートレジが補助対象になるか確認したい」
「デジタル化・AI導入補助金の申請について相談したい」
といった場合は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年9月17日時点で公表されている情報をもとに作成しています。今後、公募要領等の公表により内容が変更・追加される可能性があります。最新情報については、デジタル化・AI導入補助金事務局および中小企業庁の公表資料をご確認ください。









