デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)2026の第3次公募から、ある加点項目が静かに追加されました。その名も「デジタル化セカンドオピニオン」。
これまでの加点と、ひとつだけ決定的に違う点があります。「書類」ではなく「面談」で評価されるのです。
「面談で加点を取りにいく」——そう聞くと、身構えてしまうかもしれません。ですが、ここに多くの人が見落とす”意外な事実”があります。
この面談で評価されるのは、あなたの会社のデジタル化が「どれだけ進んでいるか」ではありません。
紙やExcel中心の会社でも、十分に加点を狙えます。では、いったい何が見られているのか——。
本記事では、デジタル化セカンドオピニオンの仕組みから、加点される条件、面談で本当に評価されるポイント、準備すべき「デジタル経営ビジョン」の作り方、そして見落とすと加点ゼロになる落とし穴まで、申請者向けマニュアルの内容にもとづいて徹底的に解説します。
📌 この記事でわかること
- デジタル化セカンドオピニオンの制度概要と新設の背景
- 加点される条件と、対象外になる落とし穴
- 面談で本当に評価される2つのポイント
- 準備すべき「デジタル経営ビジョン」の書き方
- 申請から面談までの流れ(フロー図つき)
そもそも「デジタル化セカンドオピニオン」とは?
デジタル化セカンドオピニオンとは、デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」に申請する事業者を対象とした加点措置です。2026年6月16日から始まった第3次公募で、新たに導入されました。
仕組みはシンプルです。
申請者が、事務局の定める第三者(=「確認者」)とオンライン面談を行い、自社のデジタル化・AI活用の取り組みについて客観的な評価を受けると、交付申請の審査で加点される。
ここでいう「確認者」とは、普段付き合いのあるITベンダーや支援事業者ではありません。中小企業診断士またはITコーディネータの資格を持ち、事務局に登録された専門家です。
ピンとこない方は、医療のセカンドオピニオンを思い浮かべてください。主治医とは別の医師に意見を求め、診断が妥当かを確かめる——あの仕組みと同じです。デジタル化の計画について、利害関係のない第三者の専門家から客観的な意見をもらう。それがこの制度の本質です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の枠 | 通常枠のみ(他の枠・類型は対象外) |
| 加点対象者 | 通常枠の申請者のうち、確認者と相談し評価を受けた者 |
| 確認者 | 中小企業診断士・ITコーディネータの資格を持つ登録専門家 |
| 実施方法 | オンライン面談(Zoom) |
| 開始時期 | 第3次公募(2026年6月16日〜) |
【重要】 加点を希望する場合は、申請する募集回の締切までに、面談の実施まで完了している必要があります。日程調整にも時間がかかるため、早めの行動が欠かせません。
では、なぜ事務局はわざわざ「面談」という手間のかかる加点項目を新設したのでしょうか。その理由を知ると、面談で何を伝えればよいかが見えてきます。
なぜ今、こんな加点が新設されたのか?
申請者向けマニュアルには、制度新設の背景として、ひとつの明確なデータが示されています。それは——デジタル化が進んでいる会社ほど、社長自身がデジタル化を引っぱっている、という事実です。
経営者自身がデジタル化を推進している割合(デジタル化の段階別)
※申請者向けマニュアル掲載データをもとに作成
差は歴然です。デジタル化が進む会社では社長の3人に2人が自ら推進しているのに対し、紙中心の会社では6社に1社にとどまります。さらにマニュアルでは、経営者が積極的に関与している会社ほど、デジタル化が業績改善につながっている割合が高いことも示されています。
ここから導かれる結論はこうです。
デジタル化・AI導入を本当に成果へつなげる鍵は、ツールそのものではなく、経営者自身の本気度(コミットメント)にある。
だからこそ事務局は、第三者との面談を通じて、その本気度を客観的に確認する場を設けました。書類だけでは見えない「社長が自社の課題を理解し、主導する気があるか」を確かめたい——それがこの加点の狙いです。
つまり面談は、テストではなく「本気度の確認」。では、加点を受けるには具体的に何を満たせばよいのでしょうか。
加点される条件 ― ひとつでも外すと「ゼロ」
加点を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。ひとつでも欠けると加点されません。
このうち、最も間違えやすく、最ももったいない失敗が「誰が面談に出るか」です。
面談に出るのは「社長本人」です。
- IT導入支援事業者やITベンダー等の面談同席は認められていません。
- 一方、デジタル化責任者など社内関係者の同席はOKです。
- 追加質問への詳細説明は社内担当者が補足しても構いませんが、経営者本人が出席し、自らの言葉で語れることが大前提です。
「ベンダーに任せているから代理で出てもらおう」は通用しません。むしろ、これこそが面談の核心に直結します——なぜなら、確認者が本当に見ているのは”社長そのもの”だからです。
面談で本当に見られている「2つのこと」
確認者は、面談で何を評価しているのか。マニュアルでは、評価の観点が大きく2つの軸で示されています。ここが準備の最大のカギです。
評価軸1:計画に「筋が通っているか」
1つ目は、取り組み内容の整合性・論理性です。
- 現状の課題と、導入するツールがつながっているか
- 導入の目的が明確か
- 将来目指す姿と、今回の申請内容が矛盾していないか
- スケジュールや体制に現実性があるか
- 説明に大きな矛盾がないか
ここで冒頭の”意外な事実”が効いてきます。
取り組み内容がデジタル化として高度である必要はありません。大切なのは、自社にとっての必要性を整理して伝えられることです。
「うちはまだ紙やExcelばかりで恥ずかしい」と感じる必要はありません。むしろ「だからこそ、まずここをデジタル化する」という論理が通っていれば、十分に評価されるのです。
評価軸2:経営者の「理解度と意欲」
2つ目は、社長自身がどれだけ本気かです。
- 自らの言葉で説明できているか
- 計画内容を理解しているか
- 現場任せ・ベンダー任せになっていないか
- 導入後も継続的に関与する意思があるか
想定される困難を乗り越えていく決意を、他人の受け売りでなく、自分の言葉で語れること。これが評価の決め手になります。
2つの軸を見れば分かるとおり、面談は「対話」です。完璧な模範解答を暗記する場ではなく、自社のことを自分の言葉で語れるかが問われます。とはいえ、ぶっつけ本番では緊張するもの。そこで効いてくるのが、事前に作る一枚の資料です。
準備のキモ「デジタル経営ビジョン」の作り方
面談に臨む前に、申請者は「デジタル経営ビジョン」を作成し、予約フォームに入力します。これが面談のベースになる資料です。記載項目と書き方を、マニュアルの記入例とあわせて見ていきましょう。
| 項目 | 書く内容 | 書き方のヒント |
|---|---|---|
| ① 現状把握 | 今のデジタル化・生成AIの利用状況 | 主要業務を洗い出し、状況を説明 |
| ② 将来目指す姿 | 会社の方向性とデジタル化の方向性 | 今後どう進めるかを説明 |
| ③ 本申請の目的 | 補助金で実現したいこと | なぜそのツールを選んだか説明 |
| ④ スケジュール | 導入前・後・1年後の活用 | 想定課題と対応策まで書く |
| ⑤ 体制整備 | 経営者・責任者の氏名と役割 | 役割を設定していることを示す |
| ⑥ 経営者の関わり | 関与方針・推進体制 | 自社の状況に合うものを選ぶ |
記入例(②将来目指す姿)
当社は3年後に売上高30億円到達を目標としている。そのためには現場の社員がより付加価値の高い業務に集中できる体制が必要。現在は人事・労務・会計・仕入れの一部が紙のため全体でのデータ分析ができていない。システムの集約・連携を進め、データに基づく経営ができる仕組みをつくる。その最初の一歩として、今回は勤怠管理システムを導入する。
記入例(③本申請の目的)
受発注業務はシステム化されている一方、システム間の連携がなく顧客管理業務の一部が紙やExcelによる手作業のまま。入力ミスや情報伝達の遅延が発生している。これらをデジタル化し、生産性の向上を目指す。
ここまで作り込むと気づくはずです。デジタル経営ビジョンの作成は、単なる加点対策ではなく、自社のDX計画そのものを言語化する絶好の機会だということに。面談のためだけでなく、会社の中期方針を整理する作業だと捉えると、取り組む価値が一気に高まります。
書類が整ったら、いよいよ手続きです。ここでひとつ、注意すべき”時間”の話があります。
申請から面談実施までの流れ
手続きは、申請者と確認者がやり取りしながら進みます。
▼ デジタル化セカンドオピニオン 申請の流れ
申請者 確認者
(基本情報・従業員数・都道府県・簡易計画+経営者が出席できる3日以上の候補日)
注目すべきは、日程候補を3日以上出す必要があること、そして確認者側の登録を待つステップがあることです。
締切ギリギリに動き出すと、面談の実施が締切に間に合わないおそれがあります。加点を狙うなら、締切から逆算して早めに着手しましょう。
準備と段取りが整えば、加点はぐっと近づきます。ただ最後に、「やったのに加点されなかった」を防ぐため、よくある落とし穴を確認しておきましょう。
ありがちな失敗・加点対象外になるケース
せっかく面談まで進んでも、要件を外すと加点されません。マニュアルに明記された対象外になるケースを整理しました。
- ❌ 「通常枠」以外の枠・類型(そもそも対象外)
- ❌ 事務局所定のシステム外で面談した場合
- ❌ 経営者本人が出席できず、面談がキャンセル扱いになった場合
- ❌ 面談中にカメラを有効化していない場合
- ❌ 面談の録画を承諾しない場合
さらに、誤解しやすい点も押さえておきましょう。
確認者からの評価結果は、申請者に通知されません。 面談を受けても「加点されたか」はその場では分かりません。採択・不採択の理由も開示されません。だからこそ、面談前の準備で評価ポイントを押さえておくことが何より重要なのです。
また、採択・不採択は、申請内容や他の加点・減点項目も加味して総合的に判断されます。デジタル化セカンドオピニオンは、あくまで採択率を高める要素の一つと捉えましょう。
まとめ|評価されるのは「社長の本気度」
最後に、デジタル化セカンドオピニオンのポイントを振り返ります。
- デジタル化セカンドオピニオンは、通常枠の新しい加点項目(2026年第3次公募〜)
- 中小企業診断士・ITコーディネータ資格を持つ確認者とオンライン面談し、客観評価を受けて加点
- 加点には、通常枠・確認者との面談・経営者本人の対応・カメラ有効化・録画承諾のすべてが必要
- 評価は①計画の整合性・論理性と②経営者の理解度・意欲の2軸
- 高度なデジタル化は不要。「自社になぜ必要か」を社長自身の言葉で語れることが大切
- 面談前に作るデジタル経営ビジョンは、自社のDX計画整理にも役立つ
- 面談には日程調整の時間がかかるため、締切までに面談完了を逆算して早めに動く
冒頭でお伝えしたとおり、この面談で問われるのは「立派なシステムを入れたか」ではありません。社長が本気で、自社に必要なデジタル化を進めようとしているか——ただそれだけです。
裏を返せば、自社のことを丁寧に整理し、自分の言葉で語れる経営者にとって、これは着実に加点を狙える”おいしい”項目だと言えます。
とはいえ、「デジタル経営ビジョンをどう書けばいいか分からない」「面談で何を話せばいいか不安」という方も多いはずです。
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