活用しやすい!東京都助成金「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」を徹底解説

東京都は、独自に経営にまつわる様々なニーズや課題解決に対応するために、多くの助成金や制度を設けています。その中で、新たな取組を考えている事業者に対して、積極的な投資を可能とする「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」の紹介を行います。

目次

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の目的

ポストコロナ等における事業環境の変化を課題と捉え、対応策として、事業者が創意工夫のもと「これまで営んできた事業の深化又は発展」に取り組み、これが経営基盤の強化につながると認められた場合に、当該取組に必要な経費の一部を助成するものです。

中小企業は、コロナ後の需要回復や消費者ニーズの変化への即応が喫緊の課題となっています。一方、エネルギー、原材料価格や人件費の高騰が長期化しており、課題が山積しています。このため、中小企業の創意工夫を活かして、既存事業を深化・発展させる計画を作成した場合に各種支援を展開することで、都内中小事業者の経営基盤を強化することを目的とされています。

ポイント 強みや機会を活かした新たな取組やその投資に対して、助成されます。

【重要】 対象となる取組例 
既存事業の強みを伸ばした取組や既存事業とシナジー効果のある取組

既存事業の「深化」 経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組
・高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組
・既存の商品やサービス等の品質向上の取組
・高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組

既存事業の「発展」 経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組
・新たな商品、サービスの開発
・商品、サービスの新たな提供方法の導入
・その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組

マクドナルドから見る既存事業の「深化」と「発展」の考え方

アンゾフの成長マトリクスから、成長戦略を「製品」「市場」の2軸におき、それをさらに「既存」「新規」に分けて見たときにどの戦略が合致しているか考えてみました。
まずは、ミラサポplusのホームページより引用したアンゾフの成長マトリクスを御覧ください。

引用元 https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15043/

アンゾフの成長マトリクス

既存製品×既存市場「市場浸透戦略」

いままでの市場に、既存の製品やサービスを投入して、売上高や市場シェアの拡大をめざす戦略です。市場浸透戦略では、製品の認知度や購入意欲を向上することが大きな課題となり、競争力を高め、事業自体の質を高めるための新たな設備投資を行い、リニューアルした製品、サービスの広告宣伝費等も助成金の対象として認められます。
市場浸透戦略で有名な取組は、マクドナルドの朝マックです。「朝マック」という朝食メニューを導入することで、既存の顧客層に新たな利用機会を提供し、従来、朝食にハンバーガーを食べることへの抵抗感がありましたが、「朝マック」というブランディングにより、この認識を変えることに成功しました。

新規製品×既存市場は、「新製品開発戦略」

いままでの市場に、新しい製品やサービスを投入して、売上を拡大しようとする戦略です。既存市場のニーズに対応した製品やサービスを開発すること、競合と差別化を図ることができる製品やサービスを開発するために必要な設備投資や広告宣伝費に対して、助成されます。
マクドナルドの新製品開発戦略では、既存市場に新たな商品を投入することで顧客の興味を引き、売上を拡大する効果的なアプローチを示しているのがわかります。ハンバーガー等の主要製品だけでなく、販売手法も工夫し、例えば、子ども向けのハッピーセットを通じて、新しいメニューや商品を紹介し、家族全体の来店を促進しています。

既存製品×新規市場は、「新市場開拓戦略」

既存の製品やサービスを新しい市場に投入して、勝負する戦略です。その市場に競合がいる場合は、商品力はもちろんですが、営業力・販売ネットワーク等の「売る力」が勝負を左右することも多くなります。既存製品の海外進出・海外展開は、新市場開拓戦略の一例と考えることができます。新市場開拓に向けた新商品、サービスの開発や販路開拓にかかる投資に対して助成されます。
マクドナルドはデジタル技術の活用や新たな販売チャネルの開拓により、従来のファストフードチェーンの枠を超えた事業展開を実現しています。
例えば、メニュー構成を分析すると、ジャンクフードであるハンバーガーショップが、健康志向の顧客への対応として、サラダやフルーツなどのヘルシーメニューを導入し、健康を意識する顧客層の取り込みを図っています。高品質な食材を使用したプレミアムバーガーを提供することで、より高価格帯の商品を求める顧客層にアプローチしています。
また、販売チャネルも従来の来店型から自社アプリや外部のデリバリーサービスと提携し、家庭や職場への配達サービスを展開しています。これにより、店舗に来店しない顧客層の開拓に成功しています。

新規製品×新規市場「多角化戦略」の取り組みは対象外の可能性が高い

新しい市場に新しい製品やサービスを投入する戦略です。多角化戦略は、ほとんど経験のない市場で新製品を投入するため、マーケティングのコスト、製品・サービスの開発コストがかかるなどのリスクがあります。リスクがあっても新しい収益源を求める時、または求めなくてはならない時に、ハイリスク・ハイリターンの多角化戦略がとられます。
こちらの取り組みは、新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の目的である既存事業を深化・発展させる戦略とは合致していないため、対象外となる可能性が高いです。
コロナ禍では事業再構築補助金という補助金がありましたが、多角化戦略はまさに事業再構築補助金の趣旨・目的に合った取組と言えるでしょう。

対象外となる取組

・申請者が営んできた事業内容との関連性が薄い、又は全く無い取組
・法令改正への対応など、義務的な取組
・単なる老朽設備の維持更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取組

先ほどの、多角化戦略に基づく取り組みやただ単なる設備更新等「深化」や「発展」に繋がらない取組は対象外となります。

事業概要 助成金額や対象期間

項目内容
対象者申請要件を満たす、東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)
助成対象経費既存事業を深化・発展させる計画を作成した場合に、審査で認められた経費
助成対象期間交付決定日から最大1年間
助成率助成対象経費の2/3以内
助成限度額800万円(千円未満切捨て)
申請受付期間令和6年9月2日(月)午前9時 ~
※9月2日(月)午前9時20分にて締切
交付決定日令和6年11月下旬予定

スケジュールと助成対象期間

募集回申請受付期間状況
第1回令和6年4月1日~4月15日終了
第2回令和6年5月1日~5月15日終了
第3回令和6年6月3日~6月14日終了
第4回令和6年7月1日~7月12日終了
第5回令和6年8月1日~8月15日終了
第6回令和6年9月2日~終了
第7回令和6年10月1日~予定
第8回令和6年11月1日~予定
第9回令和6年12月2日~予定
第10回令和7年1月6日~予定
第11回令和7年2月3日~予定
第12回令和7年3月3日~予定

助成対象期間は、交付決定日から1年間です。この期間内に契約・実施・支払が完了する経費が助成対象です。

助成される対象経費一覧

以下の経費は、既存事業を深化・発展させるために直接必要な経費のうち、審査で認められたものが対象となります。

助成対象経費項目備考
原材料・副資材費製品の製造や試作品の開発に必要な原材料や副資材の購入費用
機械装置・工具器具費新製品開発や生産性向上のための機械装置や工具の購入、リース、改修費用
委託・外注費 ※1製品開発や生産工程の一部を外部に委託する費用
市場調査費も含まれるが、単独での申請は不可
産業財産権出願・導入費特許、実用新案、意匠、商標の出願や導入に関する費用
規格等認証・登録費製品やサービスの品質保証のための認証取得や登録に関する費用
設備等導入費生産設備や事務所設備の導入、改修に関する費用
システム等導入費システムの構築・改修(設計・開発)費用
ソフトウェアの購入・利用費用
ハードウェア(機器、ロボット等)の購入・改修・リース費用
クラウドサービスの利用費用(従量課金方式を除く)

システム導入費の場合、単価が税抜価格で10万円未満の物品は対象外です
専門家指導費 ※1事業計画の策定や実施に関する専門家からの指導・助言費用
不動産賃借料事業実施に必要な新たな事務所や施設の賃借料
敷金、礼金、仲介手数料等は対象外
販売促進費 ※1, ※2自社Webサイトの制作・改修費
印刷物制作費
PR動画制作費
広告費
展示会出展費用(リアルおよびオンライン)
その他経費 ※1上記カテゴリーに含まれない、事業実施に必要な経費

注釈
※1 委託・外注費のうち「市場調査費」、「専門家指導費」「販売促進費」「その他経費」の単独の申請はできません。
※2 販売促進費は、既存事業に係る販売促進については対象外となります。既存事業の「発展」による新たな商品・サービス等の販売促進経費のみが対象です。

申請要件

申請要件は必ず確認しましょう。東京都内に本店の登記があることや売上高要件等の要件がありますので、下記項目に一つでも合致していない場合は、申請することができません。

項目内容
法人要件本店(実施場所が都内の場合は支店でも可)の登記が都内にあること
個人事業者要件納税地が都内にあること
売上高要件直近決算期の売上高が「2019年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少している、または直近決算期において損失を計上していること
決算期の定義「2019年の決算期」とは、決算月が2019年1月~12月に属する決算期
交付決定制限令和6年度において、本事業で1度も交付決定を受けていないこと
実施場所要件申請者が所有または賃借する本社・事業所・工場等において取り組まれ、以下の条件を満たすこと
東京都内条件令和6年9月1日時点で東京都内に登記簿上の本店または支店があること
東京都外条件神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県に所在し、令和6年9月1日時点で東京都内に登記簿上の本店があること

注釈:詳細な申請要件については、該当の募集要項を確認してください。
他にも細かい申請要件がありますので、詳細は公募要項にて必ず確認しましょう。

申請方法

申請はデジタル庁運営の電子申請システム jGrants(Jグランツのみで申請可能です。

申請に必要なアカウントとして、GビズID(プライムアカウント)が必要
※注意:GビズID「エントリーアカウント」「メンバーアカウント」では申請不可

申請方法や技術トラブルなどGビズIDに関する質問はGビズIDヘルプデスクにお問い合わせください。
電話番号:0570-023-797

審査方法

(1)書類審査
申請書の内容について、専門家が以下の視点で審査を行います。審査の結果、一定の水準に到達していると認められる場合、面接審査を実施します。
なお、審査の結果、一定水準に到達しない場合、申請は不採択となります。この場合、不採択通知を送付します。
【審査の視点】
・発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
・市場性(ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か)
・実現性(取り組むための体制は整っているか)
・優秀性(事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか)
・自己分析力(自社の状況を適切に理解しているか)

(2)面接審査
申請書の内容に基づき、専門家による面接審査が行われます。面接は特段の事情が無いかぎり、原則対面形式で行います。面接への出席は、事業者の代表者、役員・従業員に限り、最大2名まで認めます(顧問や経営コンサルタント等の同席、代理出席等はできません。)

審査の結果、一定の水準に達していると認められた場合、交付決定されます。

アドバイザー派遣のある手厚い支援

助成事業者に対し、経営アドバイザーの派遣を活用することもできます。
経営アドバイザーが現場や帳簿の確認、ヒアリング等を行った後、以下の観点で助言を行います。
① 交付決定日以降、助成事業者が希望する日【任意】
経営改善に向けた助言、助成事業をより効果的に実施するための助言などを行います。
② 完了検査時【必須】
経営改善に向けた助言、完了した助成事業を効果的に運用するための助言などを行います。

まとめ

公益財団法人東京都中小企業振興公社より公募されている、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」の解説を行いました。経済産業省よりも使いやすい制度であり、スケジュールとして十分な計画を立てた上で、申請が可能です。
申請書作成には多くの時間が必要なため、補助金の計画策定に長けている弊社にお問い合わせください。
まずはお話をお聞かせいただいて、助成金の説明や申請書策定に向けた無料相談を受け付けております。

まずはこちらのお問い合わせフォームからご相談ください。

参照・引用 リンク有
①新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 (経営改善計画策定による経営基盤強化支援)(一般コース)
②ミラサポplus

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この記事を書いた人

株式会社 ai-soumu(エーアイソウム)
代表取締役 上瀬戸研次
中小企業診断士

事業会社にて18年に渡り経理・総務・人事・情報部門といったバックオフィス業務に従事。
会社設立後はバックオフィスの業務改善・DXの専門家として、IT導入補助金を活用してクラウド会計をはじめ、各種SaaSの販売および導入支援を行う。

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