2024年度(令和6年度)版 IT導入補助金 ~2023年度採択率100%の当社が徹底解説 ~

2024年度(令和6年度)のIT導入補助金が2/16より始まりました。 
2023年度以前からIT導入補助金の支援事業者登録を行い、これまでも活用してこられた方はIT導入支援事業者やツール登録の移行手続きもひと段落して、2024年度の制度はどう変わったのかと公募要領や各種手引きの読み込みを行われている頃かと思います。

この記事は

  • これからIT導入支援事業者に登録して販路開拓をしていきたいという方 
  • IT導入補助金を活用してお得にシステム導入を行いたいという方

    向けの内容です。 
目次

IT導入補助金とは 

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者の方が、新たにシステムを導入する際にその費用の一部を国が補助する制度です。会計ソフト勤怠管理給与計算システム顧客管理システム(MA・SFA・CRM)、クラウドPOSレジ受発注管理・在庫管理システムなど、非常に多岐に渡るITツールの導入経費が対象となります。

クラウド(SaaS)等のサブスク課金タイプのシステムについては2年分の利用料が補助対象経費になります。 

ただし、スクラッチでの開発や開発の伴うIT投資は認められておらずパッケージのシステムとして一般的に販売されているもののみが補助の対象になります。 

また、「導入に関する設定等の初期費用」も補助して貰えるということが大きな特徴となります。※設定等費用も2年分が補助されます。
 大企業に比べて、全てのリソースが限られる中小企業・小規模事業者では、専門的な人材の不足や日常業務の多忙さから、新しいシステムの導入・検討や設定、データ移行、社内への浸透は困難な場合が多いかと思います。

IT導入補助金では、導入コンサルティング、導入設定・操作説明・マニュアル作成、保守対応といった、システム導入に必要な一連の流れを全て外注して、かつ、それが補助して貰えるといったとてつもなく有利な補助金となっています。 

そしてこの補助金は、IT導入を考えている企業(補助事業者)にとって大きな支援となるだけでなく、ITツールやシステムを提供するベンダー(IT導入支援事業者)にとっても新たな販路を開拓する絶好の機会となります。補助事業者は補助金を利用して、初期投資費用の負担を軽減しながら、最新のIT技術を活用することができまし、IT導入支援事業者(ベンダー)にとっても、お客様の導入コストを大幅に圧縮することで新規顧客獲得のチャンスを広げることができます! 

中小企業の抱えやすい課題である人的リソースの不足を、外部リソースの活用によって一気に生産性の向上やデジタルトランスフォーメーション(DX)をおし進めてしまおう!という狙いがあるんだろなと思っています。 

2024年度IT導入補助金概要

ひとくちにIT導入補助金と言っても、申請する枠によって補助率や補助上限額、申請時の入力内容は大きく変わります。ここでは、IT導入補助金としてよく活用される通常枠の150万円未満の部とインボイス枠のインボイス対応類型を中心に概要をまとめていきます。 

【通常枠】について

【概要】
補助率 : 1/2 
補助額 : 5万円~150万円未満 
申請要件: 下図に求められる機能を

      1つ以上もっているシステム 

求められる機能(プロセス)というのがこちら共P-01から各業種P-06に並べられた機能群になります。 

1番から順にどんなシステムが該当するかざっくりと例示すると 

  1. 顧客・販売管理システム(MAやSFA、CRM) 
  1. 決済、債権債務管理(POSレジや販売管理システム、債務管理システム) 
  1. 在庫・物流管理システム(WMS等) 
  1. 会計システム(会計、経費精算、税務申告、管理会計、減価償却等) 
  1. 総務系システム(勤怠・給与、人事管理、電子契約、社会保険等) 
  1. 業種ごとに指定された機能をもつ個別システム 
  1. 業務が特定されないもの(Microsoft365、チャットツール、WEB会議、グループウェア、クラウドストレージ等) 

となります。 

一番下の汎P-07は、その機能単独での申請が行えず、01~06までの機能で申請する際に付け加える形でしか申請出来ません。 

なのでオフィス製品やDropBox、zoom、チャットワークといったツールはそれ単独で申請することができず、他の業務プロセスを持つシステムの申請する際に、付け加えて申請することになります。 

インボイス対応類型】について

【概要】 
補助率 : 50万円未満の部分 4/5~3/4
      50万~350万円部分 2/3 
補助上限: 350万円 
申請要件: 会計受発注決済のうち

      1機能以上満たすシステム  

※2023年のデジタル化基盤導入類型が2024年のインボイス対応類型になります 

会計受発注決済機能の定義は以下の通りです。 

(ア) 会計機能 

共P-04に含まれる仕訳、各種出納帳、総勘定元帳、試算表や財務三表(B/S,P/L,C/F )の作成機能を指す。 

(イ) 受発注機能 

共P -02に含まれる売り手側機能では売上請求管理、売掛・回収管理や電子記録債権、手形管理機能、買い手側機能では仕入管理(仕入明細)、買掛・支払管理等の機能を指す。 

(ウ) 決済機能 

共P -02に含まれるPOSレジシステム等の決済機能や、商品売買に伴い金銭のやり取りによって債権債務を解消させる機能。 

この3つのうち、1機能を持つシステムを導入する場合は最大50万円までが補助され、2機能以上を持つシステムの場合は最大350万円までの補助を受けることができます。

また、インボイス枠での申請は、PCやタブレットプリンターレジ周辺機器といったハードウェアも補助対象にすることが出来ます。ソフトウェアに比べると補助額は小さいですが、PCやタブレットが購入できるのは地味に嬉しいですよね。

対象ハードウェア補助上限額補助率
PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機10万円1/2
POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機20万円1/2

補助率は少しややこしいので解説します。 

50万円以下の部分については補助率が4/5~3/4と非常に高いです。 

小規模事業者であれば50万円以下の部分については4/5の補助率、小規模事業者以外だと補助率3/4となります。 

小規模事業者の方は625,000円を投資すると50万円が補助され、中小企業の場合は666,667円を投資すると50万円が補助金として戻ってくるという仕組みです。これを超える部分の補助率は全事業者2/3となります。 

※小規模事業者の定義 

商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く): 常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 

サービス業のうち宿泊業・娯楽業: 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 

製造業その他: 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 

2023年度IT導入補助金との違い 

2023年度と2024年度のIT導入補助金の大きな違いは以下の通りです 

  1. 申請枠の名称変更 
  1. インボイス枠からECサイトが補助対象外になった 
  1. 小規模事業者について、インボイス枠の50万円以下部分の補助率が3/4から4/5に引き上げ 
  1. みらデジ経営チェックが必須から加点へ(通常枠は必須) 
  1. 加点項目の変更 

ひとつづつ順にみていきましょう。 

  1. 申請枠の名称変更 

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)からインボイス枠(インボイス対応類型)に名称変更されました。 

  1. インボイス枠からECサイトが除外 

IT導入補助金のなかで唯一スクラッチ開発が認められていたECサイトが補助対象から外れました。 

※資金の還流など色々な問題があったみたいです。弊社では不正となる申請は一切行っておらず、不正が疑われる行為があった場合、即座に取引停止とさせて頂いております 

  1. 補助率の引き上げ 

インボイス対応類型への小規模事業者による申請補助率が3/4から4/5に引き上げられました。※50万円以下の部分のみ 

小規模事業者へのインボイス対応の配慮かと思われます。 

  1. みらデジ経営チェックについて 

2023年度IT導入補助金では、みらデジ経営チェックは申請の際に必須項目となっていました。2024年度IT導入補助金では、通常枠では従来通り必須項目、インボイス対応枠等では加点項目となりました。 

  1. 加点項目の変更 

上記のみらデジ経営チェックに加え、賃上げ加点に制限が付きました。賃上げ加点は悪い言い方をすれば昨年までは「宣言さえしていれば取れた加点」でした。宣言未達でも特殊な枠での申請以外は特にペナルティもありませんでした。2024年度からは、未達の場合、他の補助金(ものづくり補助金や小規模持続化補助金、事業再構築補助金等)での長期にわたる減点措置が取られることになりました。 

賃上げ宣言したら達成を目指すのが一番ですが、賃上げ加点を付けるかどうかは少し慎重に考慮する必要が出てきそうです。 

申請方法 

 IT導入補助金では申請をIT導入支援事業者(ベンダー)と補助事業者(ユーザー)で共同申請を行う事になります。また、申請時に必要となる書類もありますので解説していきます。 

まずは事前準備として下図のものを揃える必要があります。 

必要な準備備考
gBizIDプライム
履歴事項全部証明書
納税証明
運転免許証
確定申告書
セキュリティアクション自己宣言
みらデジ経営チェック
取得に最大2週間かかります
申請日から3カ月以内のもの
直近の法人税納税証明(その2推奨)
※個人事業主のみ
※個人事業主のみ
申請前に自己宣言IDの取得が必要になります
加点項目ですが必須と考えて良いです

上記の準備が出来たらいよいよ申請です。 

申請は前述した通り、ベンダーとユーザーが共同で実施します。 

ユーザー側の入力、ベンダー側の入力、最後にユーザー側に入力フェーズが戻り、ユーザー側で最終申請を行います。 

弊社の申請サポートでは補助金が入金されるまでしっかりと伴走させて頂きます!
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ベンダー登録して販路開拓したい方(支援事業者及びツール登録について) 

冒頭に書いた通り、IT導入補助金を活用することで大きなメリットを享受することが出来るのは、何もユーザー(購入者=補助事業者)だけではありません。 

自社で開発したシステムを補助金事務局にツール登録しておくことで、ユーザーのコスト負担を大幅に削減しつつデジタル化、効率化のご提案が出来るようになります。パッケージのソフトウェアベンダーとしては最重要販売戦略に据えても良いのではないかと思っています。 

ということで、この章ではベンダーの皆さまがIT導入補助金を活用して販路開拓をされる際の手順などについて解説していきます。 

IT導入補助金では、事前に事務局にツールとして登録されているものしか補助の対象になりません。 

従って、まずは自社がIT導入支援事業者の登録と、販売したいシステムをツール登録することが必要になります。 

※IT導入支援事業者の登録にあたり、先行ツール登録といって必ず同時に1つはツール(ソフトウェア)を登録する必要があります。 

また、コンソーシアムを組成することで、傘下に販売代理店さんを入れることができるため、販売代理店さんも労無くIT導入補助金の支援事業者としてふるまうことが出来るようになります。 

代理店さんにも優良コンテンツを提供することが出来るようになるので、強固な販売網の構築にもってこいのスキームではないかと思います。 

さて、ここからは支援事業者登録に必要な準備について解説していきます。 

まず揃える書類として以下の2点が必要になります。 

法人の方しか単独での登録ができません 

必要な準備備考
履歴事項全部証明書
納税証明
申請日から3カ月以内のもの
直近の法人税納税証明(その1orその2)※その2を推奨

※個人事業主の方は単独で支援事業者登録を行うことは出来ません。コンソーシアムの構成員として登録することは可能です。 

書類を揃えたら、IT導入補助金のホームページから登録IDを作成し、登録画面へと入力を行っていきます。 

順調にいけば登録申請から1週間~2週間程度で支援事業者登録とツール登録が完了します。 

申請内容の不備で返却されることも多いので、その場合は修正して再度申請を行うことができます。 

ベンダー様のIT導入支援事業者登録およびツール登録を、伴走でしっかりとご支援させて頂くメニューもございます。 

IT導入補助金の活用事例 

IT導入補助金を活用した際の総費用と補助額、実際の自己負担額について、イメージしにくいところもあるかと思いますので、いくつか活用事例をご紹介したいと思います。 

インボイス枠の活用事例

・クラウド会計+受発注システムの導入に際し、導入設定・操作説明の代行まで申請した場合 

スクロールできます
(2年分:税別)費用補助額自己負担
会計システム120,00090,00030,000
受発注システム540,000405,000135,000
導入設定・データ移行1,300,000866,666433,334
操作説明・マニュアル500,000333,333166,667
保守費用720,000480,000240,000
合計3,180,0002,174,9991,005,001
※一例であり厳密な数値ではありません

・上記に合わせPC・タブレット等のハードウェアを購入した場合 

スクロールできます
(2年分:税別)費用補助額自己負担
会計システム120,00090,00030,000
受発注システム540,000405,000135,000
導入設定・データ移行1,300,000866,666433,334
操作説明・マニュアル500,000333,333166,667
保守費用720,000480,000240,000
PC100,00050,00050,000
タブレット100,00050,00050,000
合計3,380,0002,274,9991,105,001
※一例であり厳密な数値ではありません

PCやタブレットが補助して貰えるのは地味に嬉しいですよね!

通常枠の活用事例 

・勤怠管理システム+導入設定までIT導入補助金で申請した場合 

スクロールできます
(2年分:100名想定)費用補助額自己負担
クラウド勤怠管理720,000360,000360,000
導入設定・データ移行500,000250,000250,000
操作説明・マニュアル200,000100,000100,000
保守費用480,000240,000240,000
合計1,900,000950,000950,000
※一例であり厳密な数値ではありません

このように導入コストを大幅に抑えつつ、デジタル化や業務の効率化を図ることが可能になります。 

なぜIT導入補助金を使うべきなのか 

IT化、デジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)、業務効率化 

こういった言葉が使われる時によく感じるのが「なんだか目的のように語られているな」ということです。 

デジタル化や効率化というのは目的では無く、あくまで手段です。 

「DXを進めましょう」という言葉に強い違和感を感じるのですが、これってまさに手段が目的化してしまっているんじゃないかと思います。 

DXって目標にするものではなくて『自分達の実現したい新しいこと』を『デジタルの力』も活用しながら実現できた時に、それを周りから見た人たちが「あれはDXだね」と言うようなものだと思っています。 

そのDXと言われるようなことを成し遂げた中の人達が「DXを実現するぞ!」と掲げていたかというと、全然そんなことはなく、ただ自分たちの実現したいことに向かって一生懸命頑張っていたんじゃないかと思います。 

デジタルという手段を用いたにすぎないという話しです。 

当社もITを専門に扱う会社として、様々なツールを導入して業務を最適化していますが、これはあくまでも不足するリソースを補うことが目的となっています。 

経営者として時間を使うべきは、お客様から評価して頂きしっかりと利益を頂けるようなコンテンツを開発することとその販売方法の確立、営業力の強化、人材育成、お客様との関係づくり、サービス品質の向上だと思っています。 

売上やキャッシュを作る活動ばかりです。 

(むしろそれ以外に時間を一切使いたくないです笑) 

経営層の方であれば皆さん一緒ではないかと思います。 

なので、その時間を確保するため、そのリソースを確保するためにデジタル化は必ず進めるべきであり、システムの導入コストを大幅に抑えることが出来るIT導入補助金は必ず活用するべきだと思っています。 

手前みそになりますが、バックオフィスのIT化を専門領域としている当社は、バックオフィス業務にほとんど時間を使っていません。 

限られた経営リソースの中で目標に向かって進むためにも、ぜひデジタルの力を活用して頂きたいと思います。 

この記事を書いた人

株式会社 ai-soumu(エーアイソウム)
代表取締役 上瀬戸研次
中小企業診断士

中堅企業の人事・経理のスペシャリスト。総務全体のIT化に向けたフルスクラッチ開発のプロジェクトマネージャーを経験。
現在は、バックオフィスの業務改善の専門家として、会計や勤怠管理等のIT化を推進している。

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