2024年度は、2023年度と比較して補助金の公募回数が少なく、申請するタイミングを逃してしまった方も多いのではないでしょうか。
経済産業省が公募している主要な4大補助金、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「事業承継・引継ぎ補助金(名称変更:事業承継・M&A補助金)」を中心に、多くの中小企業が支援を求めていますが、公募タイミングを見極めるのは依然として難しい状況です。
そこで、2025年度の補助金動向を予測するために、経済産業省の令和6年度補正予算(案)の概算要求を読み解き、来年度の早期計画に活かしましょう。本記事では、現段階で判明している補助金の項目や予算の概要をもとに、来年度に向けた計画を立てるヒントをお届けします。事業の成長を目指す皆様にとって、未来の投資計画を考える貴重な機会となるでしょう。
賃上げ環境の整備、支援の充実化
現在、我が国経済は、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある。
こうした前向きな動きを、国民一人一人が実際の賃金・所得の増加という形で、手取りが増え、豊かさが実感できるよう、更に政策を前進させなければならない。賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現、そして、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとすることを目指す。
引用元:「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」について
第1章 経済の現状・課題及び経済対策の基本的考え方 1.経済の現状・課題及び対応の方向性 一部引用
内閣府の資料より、国策として第1章、第1貢目に賃上げと投資が出ていることから、国の最重要テーマは「賃上げと投資が牽引する成長型経済」と言えます。投資を促進するための補助金や助成金が多くある中で、活用できている事業者とそうではない事業者の違いは、「情報」です。
当社のコラムでも最新の情報を発信していますが、補助金や助成金、節税対策の情報は、日頃からアンテナを張り、自信で情報を取ってくるというスタンスが必要です。
また、来年度の投資計画を早期に立てておくことで、良いタイミングで補助金を活用し、手出しを少なく投資を行い、売上向上や業務改善を行うことで、賃上げを行うというグッドサイクルを作っていくことが良い事業運営に繋がると考えます。
今回のコラムで意識していただきたいのは、補助金を活用して投資をするなら賃上げ要件がマストという意識を持っていただき、ご覧いただきたいと思います。
注目ポイント:補正予算の昨年度との大きな変更点
注目したいポイントは、IT導入補助金やものづくり補助金等の事業を総じた「中小企業生産性革命推進事業」が3,400 億円と昨年度比で1,400億円の予算が上積みされています。内訳は、ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金の拡充分で2,400億円、中堅・中小大規模成長投資補助金も、総額は3,000億円と変化はありませんが、経済産業省からの予算は400億円の上積みがされました。
事業 | 今年度予算(令和5年度補正) | 来年度予算(令和6年度補正) |
---|---|---|
中小企業生産性革命推進事業 | 2,000 億円 | 2,400 億円 |
★新設:中小企業成長加速化補助金(仮称) | – | 1,000億円 |
中堅・中小大規模成長投資補助金 | 【1,000 億円、国庫債務負担行為を含め 3,000 億円規模 | 【1,400 億円、国庫債務負担行為を含め 3,000 億円規模 |
参照:中小企業庁 令和6年度補正予算・令和7年度当初予算関連https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_hosei.pdf
新補助金:新事業展開・構造転換支援 新事業進出補助金(仮称)の創設
事業再構築補助金の後継として、中小企業の成長につながる新事業進出・構造転換への投資に重点支援する新たな支援措置を創設される予定です。
予算は1,500億円規模であり、来年度の目玉となる新しい補助金の可能性があるため、注目したい補助金ですね。
気になる来年度の主要補助金を解説
中小企業・小規模事業者向け補正予算(案)総額5,600億円、既存基金の活用等を含め1兆円を上回る規模
中小企業生産性革命推進事業(3,400億円の内数)
経済産業省が掲げる「中小企業生産性革命推進事業」は、主要な4つの補助金を軸に中小企業の競争力向上を図ります。この事業では、以下の補助金を通じて事業者の生産性向上を包括的に支援し、賃上げを持続的に実現することを目指しています。
- ものづくり補助金
- 中小企業が新製品の開発や設備投資を行う際の費用を支援。
- 製造業や建設業だけでなく、サービス業など幅広い業種が対象となることが特徴。
- IT導入補助金
- デジタル化を促進するため、業務効率化に繋がるITツールやソフトウェアの導入を支援。
- DX推進の一環として、中小企業がクラウドサービスやAI技術を導入する際に活用される。
- 小規模事業者持続化補助金
- 商店や個人事業主が店舗の改装や広告宣伝を行う際の費用を支援。
- 地域経済を支える小規模事業者の事業継続を支える役割を果たしている。
- 事業承継・M&A補助金 旧:事業承継・引き継ぎ補助金
- 経営者交代時に必要な事業再編や新規設備導入を支援。
- 後継者不足が課題となっている業界での事業承継を円滑に進めるための制度。
【変更点】
最低賃金近傍の事業者に対する支援拡充(ものづくり補助金、IT導入補助金)
設備投資や取引実態等に合わせた補助上限・枠・要件見直し(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業承継M&A補助金)
中堅・中小企業の大規模成長投資補助金(1,400億円)
「中堅・中小企業の大規模成長投資補助金」は、地方の雇用創出や賃上げを支える中小企業に焦点を当てた支援策です。この補助金は、次のような課題に対応することを目的としています:
- 人手不足への対応
労働集約型の業務を自動化・省力化するための設備投資を支援。特に、製造業や物流業など、人材確保が難しい業界での活用が期待されています。 - 成長投資の促進
新規市場への参入や事業拡大に必要な設備投資を支援し、競争力を高めます。地方における中小企業が、新しい事業モデルを確立するための基盤整備を後押しします。
この補助金は、特に地域の中核企業が持続可能な成長を実現するための重要な役割を果たしています。
省力化補助金の運用改善・拡充 予算:既存基金の活用 3,000億円規模
省力化補助金の対象として、個別発注形式の省力化投資支援を新設し、省力化投資支援を運用改善・拡充を図る予定です。これは予測ですが、これまではカタログに登録された製品のみが補助対象経費として扱われていましたが、今後はカタログ以外でも個別に発注できる形式になるのかもしれません。
個別発注形式は、ものづくり補助金のオーダーメイド枠と同じ位置付けになる可能性が高いです。来年度のものづくり補助金の枠には注目したいところですね。
現状、省力化補助金の活用は、まだまだ進んでいないという現状があるため、業務改善に繋がる支援策として積極的に取り入れていきたいところですね。
2. 補助金申請のタイミングと注意点
補助金の申請は、企業にとって貴重な支援を得る機会である一方で、タイミングを逃してしまうと支援を受けられない場合があります。ここでは、補助金申請の適切なタイミングを把握し、注意すべきポイントを解説します。
1. 公募スケジュールの把握
補助金は年度内に数回に分けて公募される場合がありますが、その時期は補助金の種類や運営団体によって異なります。以下のポイントを押さえてスケジュールを見逃さないようにしましょう
例年の公募時期を調べる
例えば、主要な「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」は年度の早い段階で公募が開始されることが多く、申請期間も比較的短い傾向にあります。
中間公募・追加公募を確認する
一度見逃した場合でも、年度途中で「追加公募」が行われる場合があります。公式サイトや事業説明会をチェックしましょう。ただし、IT導入補助金の追加公募の採択率は非常に低かったケースもあるため、追加公募を求めるのではなく、早期計画、早期申請を心がけましょう。
事前受付を活用する
一部の補助金では、申請期間開始前に「事前受付」が可能な場合があります。この段階で必要書類を準備しておくことで、正式な申請開始後にスムーズに手続きを進められます。
2. 公募要領(ルールブック)の熟読
補助金申請で最も重要な準備の一つが、公募要領(ルールブック)の熟読です。公募要領には補助金申請のルールや評価基準が詳細に記載されています。このルールをしっかり理解していないと、申請が通らないどころか不備で受理されないこともあります。
公募要領をしっかり読むことで、申請の不備やミスを防ぐことができる。採択率を上げることができる。といったメリットしかありませんので、必ず読み込むことが必要です。公募要領で抑えるポイントは4つです。
①対象事業の要件
補助金ごとに対象となる事業や活動が細かく定められています。例えば、「IT導入補助金」であれば、補助対象となるITツールの要件や提供事業者の登録状況を確認します。
また、契約を結んでしまっていたり、既に支払っている場合は、補助対象経費にはならない補助金の方が多いので、補助対象となる経費やルールも抑えておきましょう。
②補助金額と補助率
例えば、補助金額が「100万円~1,000万円」、補助率が「2/3」など具体的に記載されています。補助率を正確に理解し、自己負担額を見積もることが大切です。
③申請書類のチェックリスト
提出が求められる書類(事業計画書、決算書、見積書など)がリストアップされています。これを漏れなく準備することで不備を防ぎます。
④評価基準
審査で重視されるポイント(生産性向上の具体性、補助金活用後の経済効果など)が記載されています。これを把握して申請書に反映させましょう。
3. 補助金を活用した投資計画の立て方
3-1. 補助金活用の目的を明確にする
補助金を利用する目的を明確にすることが、計画立案の第一歩です。以下の質問に答える形でゴールを設定しましょう:
成果をどのように測定するか?
例:「新設備の導入による製造単価の低下率」「新規顧客獲得数の増加」
事業のどの部分を改善・成長させたいのか?
例:「生産ラインを自動化する」「ITツールを導入して業務効率を改善する」
補助金を使った後、どのような成果を期待するか?
例:「売上を前年比で20%増加させる」「従業員の作業時間を30%削減する」
3-2. 投資対象の選定
補助金は、補助対象となる設備や活動が決まっている場合が多いため、以下の手順で投資対象を選定しましょう。
補助対象と事業ニーズの一致を確認する
例えば、「ものづくり補助金」では生産設備の導入が対象となりますが、自社が求める改善がこの補助金の要件に合致しているかを確認します。
必要な投資額を見積り、見積書を入手する
設備投資やITツール導入の際には、見積書を取得して具体的な費用を計算します。補助金の補助率を考慮し、自己負担額を見積もることも重要です。
例:補助金額:1,000万円(自己負担額:500万円) 補助率:2/3の場合
投資額:1,500万円
必要な投資額を見積り、見積書を入手する
限られたリソースを効率的に活用するため、投資の優先順位を決定します。
- 短期的な効果を期待できるもの
- 長期的な成長につながるもの
事業計画書を作成する
補助金申請には、具体的な事業計画書の提出が求められます。この計画書は、補助金を活用した投資の妥当性を説明するための重要な資料です。
投資の必要性を明示する
- 自社の課題を定量的に説明します。
例:「現在の生産能力では、受注増加に対応できず、納期遅れが発生している」
補助金活用による効果を具体化する
- 補助金を活用することで達成可能な成果を数値で示します。
例:「新設備導入後、製造コストが20%削減される見込み」
実現可能性を強調する
補助金以外の資金(自己資金や融資)を含めた全体の資金計画を明示し、計画の実現性をアピールします。
まとめ
令和7年度の補助金は、賃上げ支援、地方創生、新たな技術分野への投資を中心に展開されます。事業者は早期に補助金情報を収集し、来年度に向けた事業計画を立てることで、支援を最大限に活用できるでしょう。
補助金は、適切な計画と活用方法があれば、事業の成長を加速させる大きなチャンスです。ただし、単なる資金調達手段として利用するのではなく、事業全体の戦略と結びつけることが重要です。この記事を参考に、補助金を効果的に活用した投資計画を立て、事業の未来を切り開いてください。
また、令和7年度の補助金は、当初予算の概要をご覧いただくことで、大まかにはわかります。ただし、あくまでも概算要求であるため確定事項ではありません。また、来年度の補助金のスケジュールは、12月~2月の間までにはわかるため、情報キャッチをこまめに行う必要があります。
令和6年度補正予算・令和7年度当初予算関連の概要はこちらをご覧ください。https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/gaisan_point.pdf
※本記事はこちらを参照しております。
投資内容に対して、どのような補助金が使えるのかわからないこともあるため、当社にご相談いただきますと、様々な切り口でご提案をさせていただきます。
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