訪日外客数が過去最高値を更新しており、コロナ前以上に盛り上がりを見せているインバウンド市場。2024年9月時点で既に2,688万人の外国人観光客が日本を訪れ、2023年の年間実績を上回りました。政府は2024年末には約3,500万人に達する見通しを示し、さらに2030年には6,000万人という壮大な目標を掲げています。
今後さらに過熱していくことが予想されるインバウンド市場ですが、多言語対応や決済機器導入などインバウンド観光客に対する環境整備は十分とは言えません。外国人旅行者のニーズに対応し、利便性や快適性を向上する取組が求められています。
本記事では、東京都内の「インバウンド対応力強化支援補助金」について、概要や対象となる事業、申請スケジュールなどを徹底解説します!
「インバウンド対応力強化支援補助金」とは?
「インバウンド対応力強化支援補助金」とは、公益財団法人 東京観光財団が募集している補助金です。東京都内の宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設等を対象とし、訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性を向上する目的で新たに実施する受入対応強化の取組を支援するものです。たとえば多言語対応や、クレジットカードや電子マネー等の決済機器導入、トイレの洋式化、防犯カメラの設置(宿泊施設のみ)など、インバウンド受入対応強化に必要とされるものが補助対象事業となります。
交付決定され、計画通りに補助事業が実施されたと認められた場合には、補助対象経費の2分の1以内、1施設/店舗/営業所あたり300万円(中小企業団体等、観光関連事業者グループ向けには1,000万円)を上限に補助されます。
通年で申請可能ですが、補助金申請額が予算額に達した時点で受付終了となりますので、申請を検討されている事業者様はお早めに申請されることをお勧めします。
◆補助対象施設等
東京都内にある宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設等、観光バス事業者、中小企業団体等、観光関連事業者グループ
◆補助率・限度額
補助事業に係る対象経費の2分の1以内
※対象事業によって上限額が異なります
※1施設・店舗・営業所当たり上限300万円
※中小企業団体等・観光関連事業者グループの場合は、
1団体・グループ当たり上限 1,000 万円
◆募集期間
令和6年4月1日(月)~令和7年3月31日(月)まで
ただし、補助金申請額が予算額に達した時点で受付終了
◆補助事業実施期間
交付決定日から1年以内
具体的な補助対象経費や補助要件を詳しく解説!
通年で申請できて、上限300万円(中小企業団体等・観光関連事業者グループの場合は1,000万円)の補助金を受給できるのは利用しやすい補助金ですよね。それでは、具体的な補助要件を解説します。
補助対象事業者
補助対象となる事業者は以下の通りです。東京都内で事業を営んでいることが前提となります。
- 都内において旅館業法の許可を受けて「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」を行う施設
- 都内の飲食店、免税店(資本金5,000万円以下または常時使用する従業員の数が50人以下の中小企業者のみ)
- 都内の体験型コンテンツ提供施設等(資本金5,000万円以下または常時使用する従業員の数が100人以下の中小企業者のみ)
- 都内において観光周遊及び空港アクセス等の事業を行う観光バス事業者
- 外国人旅行者の受入対応に取り組む中小企業団体等・観光関連事業者グループ
ただし、国や都道府県などから補助事業の交付決定取消し等を受けたことがある、都税その他租税の未申告又は滞納がある、宗教活動や政治活動を主たる目的とする団体等、実質的に大企業が経営に参画している等、一部の事業者は補助対象外となります。
補助対象事業
補助対象となるのは、「インバウンド対応力強化のために新たに実施する事業」です。
- 多言語対応(施設等の案内表示・施設内設備等の利用案内・ホームページ・パンフレットの多言語化、多言語対応タブレットの導入、翻訳機の購入等)
- 公衆無線LANの設置
- クレジットカードや電子マネー等の決済機器の導入
- 館内及び客室内トイレの洋式化
- 客室の和洋式化【宿泊施設のみ】
- 館内及び客室内のテレビの国際放送設備の整備【宿泊施設のみ】
- 外国人旅行者の受入対応、アクセシブル・ツーリズムに係る人材育成(研修会の開催、外部セミナーの受講、接遇マニュアルの作成等)
- 災害時における外国人旅行者の受入対応(防災マップの作成、避難誘導訓練の実施・マニュアルの作成等)
- 防犯カメラの設置【宿泊施設のみ】
- 外国人用グルメサイトへの掲載に要する費用【飲食店のみ】 など
ただし、補助事業に関係のない経費や、間接経費(補助金交付申請等の手続に係る申請書作成代行費、各種証明書取得経費、消費税その他の租税公課、送料、交通・宿泊費、 収入印紙代、通信費、水道光熱費、振込手数料等)、直接人件費、中古品の購入経費、汎用性があり目的外しようになり得るものなどは補助対象外となります。また、初期経費のみが対象となり、運営費(ランニングコスト)は対象外です。
補助率・補助額
補助対象経費の2分の1以内が補助されます。ただし、コンサルティングに係る経費は補助対象経費の1割が上限です。
宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設、観光バス事業者は、1施設/店舗/営業所あたり300万円が補助上限です。中小企業団体等、観光関連事業者グループは、1団体/グループあたり1,000万円が補助上限となります。
全体の流れ
補助金の申請から受領、その後に必要な手続きは下記のとおりです。
交付申請書、補助事業計画書、誓約書、登記簿謄本等、社歴書・経歴書、直近2期分の財務諸表、納税証明書、申請内容が確認できる書類、見積書・相見積書、利用者向けパンフレットなどが必要です。
補助事業の内容、法人か個人か、電子申請か郵送申請か等によって必要書類が異なりますので、自社にとって必要な書類を揃えます。
電子申請(JGrants)または郵送にて申請を行います。
電子申請の場合は令和7年3月31日17時締切、郵送の場合は当日消印有効です。
審査は書類審査に加え、施設・店舗内に入場し確認を行う場合があります。
申請する事業により審査に要する時間は異なりますが、審査に図れる状態になってから、
通常1か月程度時間を要します。
採択された場合、交付決定通知が届きます。交付決定日以降に補助事業に着手できるようになります。
交付決定日より前に補助事業を開始した場合、補助金は交付されませんのでご注意ください。
補助事業の実施は、交付決定日から1年以内に限ります。
事業着手後、内容や費用等に変更がある場合、事前に必ず変更承認申請を提出する必要があります。
補助事業完了後30日以内又は補助事業実施期間内のいずれか早い期日までに、実績報告書を作成し、提出します。同時に契約書、納品書、請求書、領収書、成果物各種などの提出が求められます。
実績報告書が受理されると、東京観光財団の担当者が施設・店舗内に入場し、目視確認及び写真撮影等(客室内を含む)の完了検査が行われます。
完了検査の後、問題がないと認められると、補助金額が確定されます。
事業者は補助金請求書を作成し、提出すると、補助金を受け取ることができます。
補助金で実施した事業の成果をみるため、実績報告を提出してから1年後に受入対応状況について報告します。
補助対象となる事業とは?
それでは、具体的にはどのような事業が補助対象となるのでしょうか。一部の例をご紹介します。
外国人旅行者の受入対応に係る人材育成
外国人旅行者の受入対応向上を目的とした「専門家を招聘した研修会の開催」や、「外部団体で開催されているセミナーへの参加」などが対象となります。ただし、団体・グループの場合は「外部団体で開催されているセミナーへの参加」は対象外です。
例えば、外国人旅行者に対するおもてなし手法の習得(多言語対応の習得・向上を含む)や、接遇マニュアルの作成が対象事業例として挙げられます。
①補助対象事業者が所有または管理運営する東京都内の施設、店舗で働く従業員等(役員を含む)を対象とした取組であること、②外国人旅行者の受入対応の向上に資する内容であること、③多様な文化や習慣への対応を含む内容であることが補助要件です。
災害時における外国人旅行者の受入対応
災害等の緊急時における外国人旅行者の安全・安心を確保するための取組も補助対象となります。
例えば以下のような取組が例として挙げられます。
◆緊急時の館内放送設備や災害対応用の館内サインの多言語化
◆外国人旅行者向け災害対応リーフレットの作成
◆防災マップの多言語化
◆外国人旅行者向け災害対応研修や避難誘導訓練の実施
◆拡声器、情報伝達用のサインボードやデジタルサイネージの導入
◆非常用電源の導入
◆室内設備等の固定
◆感染症対策マニュアルの作成
外国人旅行者向け(多言語)に新たに実施、または対策を強化するものに限ります。
単なる買い替え・更新、従業員同士又は社内向けの取組、消防計画など法令等で義務化されているものは対象外です。
外国人向けグルメサイトへの登録・掲載(飲食店のみ)
飲食店の場合は、主として飲食店などの情報を中心として扱う外国人向けのグルメサイト(SNSは対象外)への登録に要する費用が補助対象となります。
サイト登録費用として、初期費用および初月利用料が対象となります。初期費用は海外旅行者に向けた情報発信に資するもののみが補助対象です。
また、情報ページ・紹介記事作成、使用写真撮影・動画作成、翻訳など、当該サイトへ直接依頼するコンテンツ作成費用も補助対象経費に計上できます。
まとめ
訪日外国人客の急増に伴い、東京都はインバウンド受入環境の整備を積極的に支援しています。今回ご紹介した「インバウンド対応力強化支援補助金」は、宿泊施設や飲食店、免税店など、外国人観光客と直接関わる事業者を対象に、多言語対応や無線LANの設置、決済環境の整備など、幅広い取り組みをサポートする制度です。
インバウンド市場の更なる拡大が見込まれる中、この補助金を活用して受入環境を整備することは、事業者の競争力強化につながるだけでなく、東京の観光産業全体の発展にも貢献することでしょう。ぜひ、自社の課題に合わせて積極的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。
当社では、補助金の申請に向けた無料相談を受け付けております。補助金の注意事項や、補助金に該当しそうかどうかのご相談、申請に関するお悩み事がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考・引用資料:公益財団法人 東京観光財団 インバウンド対応力強化支援補助金(https://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/welcome-foreigner/)