クラウド会計とインストール型会計ソフトの違い•比較

このところテレビCMでもおなじみになってきたクラウド会計ですが、従来のインストール型ソフトと何が違うのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

  • 起業をひかえた(間もない)経営者として会計ソフトは何を選べばいいのか
  • テレワークやIT化を進めていきたいと考えている経営者、部門長としてクラウドへの移行を検討している

といった方に向けて、今日はクラウド会計とインストール型会計ソフトの違いについて、お伝えしていきたいと思います。

目次

1.クラウド会計とインストール型会計ソフトの違い

1)インストールの必要がない

そのままです。
やはり、一番最初にお伝えするべき大きな違いはここかなと思います。
クラウド会計はインターネットに繋げる環境があれば、いつでもどこからでも会計処理を行うことができます。
また、クラウド会計は端末を選びません。パソコンであろうと、タブレットであろうと、スマートフォンであろうと処理を行うことが可能です。
これだけでも大きな利便性を感じることができるのではないでしょうか。

一方、インストールが必要な会計ソフトは、パソコンや自社のサーバーにインストールして使うことになるため、基本的には出社して特定のパソコンで利用するという使い方になります。
テレワークをするとなった場合は特定のパソコン、もしくはサーバーにアクセスして使うことになります。

今後主流になっていくであろう新しい働き方を実施するにあたって、クラウド会計と比べると少しハードルが高くなります。

2)SaaSについて

Software as a Serviceの略で、クラウド上でサービスを提供する形態のことをSaaSと言います。
ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアの機能を活用することができます。
クラウド会計もクラウド上でサービスが提供されることから、SaaSという大きなくくりに入ります。
SaaSには、会計以外にもMicrosoft 365やサイボウズoffice、kintone、Slack、チャットワーク、Salesforce、zoom、Dropboxといった有名なソフトウェアが沢山あります。
少し前までインストールが必要であったソフトウェアもどんどんクラウドに変わっていっています‼

SaaSの特徴としては

  • PC、スマートフォン、タブレットなど端末を選ばずにデータにアクセスできる
  • 編集機能のあるSaaSの場合、複数の人間が同一データを共有しながら編集もできる
  • データはクラウド上に保存される
  • ほとんどがサブスクリプション(月額制)で提供されている
  • 他のソフトウェアとの連携を前提に作られている

といったことがあげられます。

利用者みんながこんな具合にクラウド上のサービスにアクセスするイメージです。

3)業務フローからみた設計思想の違い

クラウド会計ではSaaSの特徴を活かして、他のソフトウェアと連携することを前提に作りこまれています。
ここでは、業務フロー・データフローから見たクラウド会計とインストール型会計ソフトの違いについて触れていきます。

会社によって取り扱っているサービスや商品が異なるのは当然ですが、少し視座をあげて企業活動を俯瞰で捉えると、どこの会社でも各部門で同じような機能を持っていることが分かります。
下の図をご覧ください。

この様に、会社にはさまざまな機能がありますが、バックヤード(管理部門)で展開される仕事は、大体がこのような業務とデータのフローになるかと思います。
クラウド会計では、この業務間のデータの流れを連携して自動化してしまおう、そして他社リソース(他社のソフトウェア)も活用しながら企業活動を一元管理(ERP)して効率化しましょうという、という最終目標に向けて設計されています。

インストールが必要な従来のソフトウェアは、元々がそれぞれ個別業務の効率化を目的として作られてきたこともあって、連携についてはソフトウェア外での処理が必要になる事が多いです。
同一メーカーのソフトウェア同士であれば業務間の連携がある場合もありますが、メーカーが異なるソフトウェア同士での連携は難しく、CSVやExcelといったソフトウェア外での処理が必要になります。
そこで転記ミスが生じてしまったり、処理に時間をかけなければならないと言ったことが起こってしまいます。

2.クラウド会計の特徴

クラウド会計とインストール型会計システムでは、【機能間を連携する】というところに大きな違いがあると書きましたが
ここではクラウド会計の特徴である、API連携自動仕訳がどういうものなのかをご説明していきます。
クラウド会計は他社のソフトウェア(SaaS)とであっても、API連携が可能であれば、ほぼワンクリックでデータを連携させることが可能となります。
さらに、データ連携で取り込まれたものを自動仕訳することで、革命的な業務効率化の実現を目指しています。

1)API連携とは

APIとは、Application Programming Interfaceの略で、異なるソフトウェアがプログラムを共有するための接点のことを言います。
このAPIを活用してアプリケーション同士を連携させたものをAPI連携と呼んでいます。
クラウド会計は、このAPI連携を活用することで、自動もしくは半自動で他機能に蓄積されたデータを取り込むことができるようになっています。

例えば、銀行口座の入出金明細であったり、カードの利用明細、電子マネーの利用明細、さらにはAmazonや楽天といったECサイトのアカウントも連携が可能となっています。
環境さえ整えてあげれば、現金以外のお金が動いたデータを全て自動的に会計システムに取り込むことができるようになっています。

下図は、APIという接点に対して、それぞれのソフトウェアが繋ぎにくるところをイメージしています。

2)自動仕訳とは

自動仕訳と聞くだけで、従来のソフトウェアと明らかな違いがありそうだなと感じるのではないでしょうか。
もしくは、AIなど最先端のテクノロジーを、とうとう自社でも使うことになるのか…みたいな感慨があったりしないですか?
私は初めてクラウド会計を導入した時に、そんなワクワクを感じていました・・・!

さて、気を取り直して自動仕訳について説明していきます。
自動仕訳とは、その名の通りAPI連携によって取り込まれたデータを自動で仕訳してくれるものです。

クラウド会計で言うところの自動仕訳は2種類あります。

  1. 取り込んだデータをAIが判断して、勘定科目の提案をしてくれるもの
  2. あらかじめ仕訳ルールを設定しておいて、そのルールに則って自動で仕訳されるもの

この2つになります。


クラウド会計を使いこなす上で非常に重要になるのが、②の自動仕訳ルールの運用になります。
導入当初は自動仕訳ルールが全く登録されていない状態なので、連携されたデータに対する仕訳は、システムからの提案だけが表示されている状態になります。
下図の赤枠で囲った部分をご覧ください。

※こちらの画像はMFクラウド様よりご提供頂いたデモデータから抜き出したものです

勘定科目が振られていますが、このうち雲のマークと青色で表示されている科目が、システム(AI)から提案されている仕訳となります。ちなみに、この初期設定でシステムから提案される仕訳は、そこまで精度が高くありません。

続いて、背景が白で表示されている勘定科目をご覧ください。
上から2つめの連携データに事務所家賃があります。これに対する勘定科目候補は地代家賃となっています。
この背景が白くなっているものは、自身で設定した自動仕訳ルールに基づいて仕訳されたものになっています。
クラウド会計では、この自動仕訳ルールを蓄積させていくことで、より会計処理を効率化していくことができるようになります。

下は自動仕訳ルールの編集画面です。

※こちらの画像はMFクラウド様よりご提供頂いたデモデータから抜き出したものです

一番上の自動仕訳ルールの意味を少しご説明すると、

  • 連携されたデータに『家賃』という文言が入っていたら、勘定科目は地代家賃にしてください
  • 消費税は課税仕入10%です
  • 摘要には、銀行の出金明細に載ってきた文言をそのまま入れておいてください

という自動仕訳ルールが設定されていることになります。

自動仕訳ルールは、事前に沢山登録しておいて、しょっぱなから自動仕訳の精度を高めることもできます。
一方、連携されて取り込まれたデータに対して仕訳をしていくことで、自動仕訳ルールとして登録させることもできます。

運用としては、後者の方が効率的に導入していけるかなと思っています。

自動仕訳ルールが沢山登録されて、連携されたデータに白い背景の勘定科目が全部ついているような状態になったら・・・、あとはもう一括チェックして、一括登録をしてしまえば、とてつもない効率化が実現されます。

3)他機能(他社ソフトウェア)との連携

SaaSの特徴のところでご説明したように、クラウド会計も他ソフトウェアとの連携を前提に作りこまれています。
これまでご説明してきた銀行の入出金明細やクレジットカードの利用明細だけでなく、例えば請求書を作成したデータがそのまま会計に連動して【売上高 - 売掛金】の関係で計上できたり、売掛金の入金があった際には、その仕訳を会計ソフトに入れることで、請求書ソフトで保持している売掛金のステータスが、自動的に入金状態に変わるなど債権管理まで繋がっていきます

給与計算にしても同様で、API連携が可能なSaaSの勤怠管理システムと給与計算システムが導入されていれば、勤怠データが自動的に給与計算ソフトに飛んでいき、給与計算されたデータが自動的にクラウド会計に接続されます。
さらに、利用銀行によっては、会計システムや給与計算システムから直接、給与振込までかけられるところまで繋がります。

  • ワンポイント

クレジットカードを連携させた場合、カード利用明細のデータは取得されますが、中には何に対してお金がでていったのか分からない明細もあります。
例えば、Amazonで3,000円の事務用品を購入して、会社クレジットカードで引落す取引を行ったとします。

この場合、クレジットカード利用明細には『Amazon 3,000円』という情報しか載ってこないため、何を買ったのか分からず仕訳することができません。
こんな困ったことを無くすために、Amazonアカウントを会計システムに連携させておきます。

Amazonから取得したデータには、何を購入したのかしっかりと明細が記載されてきます。
したがって、一つ目の仕訳で【事務用品費 – 未払金「Amazon」】と処理して、次に【未払金「Amazon」 - 未払金「クレジットカード」】といった振替処理を行っていくことで、未払金のクレジットカード利用分だけが負債として残ります。
あとは、引落があった時に未払金「クレジットカード」で処理をするだけになります。

3.クラウド会計のメリット、デメリット

インストール型ソフトと比較した場合のメリットとデメリットをまとめました。
まずはメリットから。

1)メリット

  • ネット環境があればどこからでも操作が可能

クラウド上にあるサービスを利用するので、ネット環境さえあればどこからでも利用することが可能です。これは端末についても同様で、スマートフォン、タブレット、パソコンからの処理が可能となります。

  • API連携、自動仕訳による大幅な業務の効率化

API連携と自動仕訳をしっかり使いこなすことで、大幅な業務の効率化が実現します。
クラウド会計を導入するのであれば、必ず使いこなしたい機能です。

  • 金額の入力間違いが少なくなる

入出金があったものを、データとして自動で取得してくるので、手入力やCSVでの受け渡しと比較して、格段に入力ミスは削減できます。

  • 自動更新で常に最新版のソフトウェアが利用できる

クラウド会計はクラウド上にあるソフトウェアなので、自身で更新をしなくても常に最新のソフトウェアを利用することができます。法律が変わったときやバージョンアップがあった時などには、インストールが必要になる従来型のソフトと比較して、とても楽になります。

  • サーバーを自社で持つ必要がなくなる

ソフトウェアをサーバーにインストールする必要がないので、会計ソフトのためだけにサーバーを置いていた場合、自社サーバーを持つ必要がなくなります。また、サーバーの入れ替えで頭を悩ませる必要もなくなります。

  • 分からないことがチャットですぐに聞ける

これは実は非常に大きなメリットだと感じていて、分からないことがあった場合、すぐにチャットで聞くことができます。下に画面をキャプチャしたものを貼り付けてありますが、赤枠で囲った部分(画面右下に常に表示)をクリックorタップして問い合わせをすることができます。
AIが回答してくれる時間帯とオぺーレーターが回答してくれる時間帯とありますが、オペレーターからの回答について『遅い』など、特にストレスを感じたことはありません。
聞いたことに対して、しっかりと答えを教えてくれます。

  • 無料期間(1か月)を利用して準備やテストが進められる

クラウド会計に限らず、SaaSは最初に一か月の無料期間がついていることが多いので、自社の業務にマッチするかどうか、しっかりとテストを実施してから導入することができることもメリットですね。

  • タグを使うことで横断的な管理をすることができる

クラウド会計(MFクラウド会計・会計freee)特有の考え方で、タグというものがあります。
例えばAプロジェクトというタグを作成した場合、仕訳登録の際にタグを付与することができます。
タグによる検索も可能となるため、Aプロジェクトに対する収入と費用を合わせて見たい場合、仕訳日記帳を開いてAプロジェクトのタグをつまみ、検索するだけでタグ付けされた全仕訳を拾えるようになります。
検索性が格段にアップする新しい概念です。
タグについては、freeeとマネーフォワードで運用が大きく異なるので、またどこかで詳しく書いていこうと思います。

2)デメリット

挙げてみたものの、非常に項目が少なくて『ホントかよ…』という印象を持たれてしまうかもしれませんが、クラウド会計単体をインストール型の会計ソフトと比較した場合、これくらいしか思い浮かびませんでした。
給与計算や請求・債権管理など他機能との連携といったところで見た場合、また少し違ったデメリットがあると感じる部分はありますが、それについてはまた別の機会にお伝えしていきます。

  • ネットワーク環境がないと利用できない

これは当然のことですが、クラウド上にあるサービスを利用することになるので、ネットワーク環境がなければ操作する事はできません。

  • 画面の切替えに若干のストレスがあるかもしれない

ウェブ上でシステムを動かすことになるので、画面を切り替える際に若干のストレスを感じることがあるかもしれません。(個人的にはストレスを感じるほどの遅延は経験したことがありません)
月間の仕訳が10万件を超えるような大規模な企業だと、もしかしたら重くなるなど遅延が出てくるのかもしれませんが、私は経験したことがありません。

以上、メリット・デメリットを並べてみました。
インストール型の会計ソフトと比べると、考え方が大きく異なったり、使い方も異なるので慣れは必要になりますが、これはどんなソフトウェアに変えた時も同じことなのでデメリットとはしていません。

この記事をご覧の皆さまも、ぜひクラウド会計を使いこなして、革命的な会計処理の効率化を実感してください!

目次